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    放射性物質の体外除去

    摂取した放射性核種により被ばくが問題になる場合、胃や肺の洗浄、外科的手術、特に薬剤による体外除去が重要な処置方法となる。
    実際の事故時には多種の核種を同時に体内に取り込むことも多く、核種の種類、摂取時の化学形、体内における存在状態や挙動を知ることが重要である。
    複数の除去剤を利用する場合にはそれらの相互作用についても考慮する必要があり、除去のメカニズムを理解した上で方法を選択することが望ましい。
    以下に記すのは国際的に推奨されている除去剤利用方法であるが、用量については摂取量により異なる(文献参照)


    (1)放射性ヨウ素(131I)にはヨウ素剤が用いられる。
    ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分であり131Iを体内に摂取すると甲状腺に濃縮される。
    131Iによる甲状腺被ばくを軽減するためにヨウ素剤を投与して131Iの濃度を希釈する。
    ヨウ素剤は主としてヨウ化カリウム(KI)が用いられる。
    ヨウ素剤の投与は早ければ早いほど効果がある。
    チェルノブイリ原発事故の際には旧ソ連や東欧諸国の幼児、青少年に投与された。


    (2)放射性セシウム(137Cs)にはプルシアンブルー(PB)が用いられる)。
    PBはフェロシアン化鉄のことで137Csに対して顕著な吸着効果を示す。
    ブラジル・ゴイアニアの137Cs摂取事故の時にはPBが用いられた。


    (3)放射性ストロンチウム(90Sr)にはアルギン酸ナトリウムが推奨されている。
    アルギン酸は、褐藻類に含まれている粘質多糖類で90Srと不溶性の塩を生成して体外に排泄する作用がある。
    この他、甲殻類の殻に含まれているキチン、キトサンにも効果のあることが認められている。


    (4)プルトニウム、アメリシウムなどには合成キレート剤が用いられる。
    人体を対象とする合成キレート剤の中で最も一般的なものはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)である。
    DTPAはdiethyrene diamine tetra acetic acidの略で代表的なキレート試薬であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を基に開発された。
    ハンフォード原子力施設従事者のアメリシウム(Am)摂取事故で用いられ、その効果が実証されている。
    多くの合成キレート剤が検討されているが副作用に注意が必要である。


    (5)その他の放射性核種についてもそれぞれ特性的な除去剤が用いられる。
    体内放射能の除去法については古くから多くの研究が行なわれてきた。その多くは動物を用いた実験であり、動物実験の結果がそのまま人間にあてはまらない場合も多い。
    副作用にも留意しなくてはならない。
    国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)、英国放射線防護局(NRPB)などの国際機関でも、体内放射能の除去法に関する緊急時対策の指針がまとめられている。


    [参考文献]
    (1)NCRP No.65(1980)
    (2)IAEA Safety Series、No47(1978)
    (3)青木芳朗、渡利一夫(編):人体内放射能の除去技術、講談社サイエンティフィク(1996)
    (4)渡利一夫、稲葉次郎(編):放射能と人体、研成社(2000年4月)
    (5)Generic.prosedures for medical responnse during nuclear and radiological emargency,IAEA-TECDOC series

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